22話「あの日の3人」
彗との戦いを終えた曜達はその後ミナトタワーへと向かい、彗の居室を訪ねた。
そして壁に飾られていたビームバットを取り戻すと、曜達は三田の隠れ家へと引き返した。
<彩葉ツキ>
「きっと、本当にこのビームバットが欲しかったんだね…
彗…ミナトトライブが好きだったから…」
ツキはビームバットを抱きしめて、先程からソファで泣き続けていた。
死んでしまった彗を思って――
<青山カズキ>
「そろそろ僕達も、なりふり構っていられなくなってきたな…
この先、戦力の増強が必要かもね」
カズキはツキの姿を横目で見つめながら、深刻そうな表情で言った。
仲間の死を目の当たりにした事で、今後の戦いに強い危機感を抱くようになったのかもしれない。
<三田三太郎>
「だったら…俺も仲間に入れてくれねえか? お前らはこれから各シティを回るんだろ?
消えちまったミナトの奴らを探すにはついていくのがよさそうだしな」
<青山カズキ>
「構わないけど…有栖川さんからミナトを託されたんじゃなかったの?」
<三田三太郎>
「それなら、四つ子達に任せるぜ。統治ルールもなくなったし大丈夫だろ」
<一郎>
「うん、俺達だけでやっていけると思う」
三田が加入してくれるというのなら、曜としても心強かった。なんと言っても、三田は彗が憧れた伝説のミナトトライブの一員なのだから。
<五反田豊>
「青山さん、改めて…私と大井も加入させてくれませんか?」
<青山カズキ>
「いいのかい?」
<五反田豊>
「既にこれは…シナガワだけの戦いではありませんから。大井もこの事は同意済みです」
五反田と大井も、正式加入を申し出てくれた。
トラッシュトライブに、新たに三名の仲間が加わった事になる。
今後の戦力増強に向けて、幸先のいいスタートを切る事ができたともいえる。
<青山カズキ>
「そういう事ならよろしく頼むよ。さて、今後の事だけど――」
<五反田豊>
「その前に少しいいですか? 黒中さん、XBで使ったボールはお持ちですか?」
<黒中曜>
「ああ、あるけど…」
彗との戦いが終わった後、曜はボールを探し出して回収していた。
彗とXBで戦った事を、忘れたくなかったからだ。
<五反田豊>
「少し気になる事がありまして…私に預けてくれませんか?」
<黒中曜>
「ん? あぁ、好きに調べてくれ」
曜はためらうことなくボールを五反田に渡した。五反田なら、必ずこのボールを役立ててくれると確信していた。
<五反田豊>
「ありがとうございます」
<三田三太郎>
「…っと、そうだ。俺は曜とツキちゃんに渡すもんがあるんだった。ほら、これ。
彗が死んだときに俺の方に吹っ飛んできたんだ」
三田はふと思い出したようにそう言って、ポケットから一台のスマホを取り出した。
スマホはボロボロの状態で、画面には蜘蛛の巣状のヒビが入っていた。
<彩葉ツキ>
「これ、彗のスマホ…? さすがに中を見るのはダメ…だよね…あっ…画面ついちゃった…」
ツキの手が触れ、スマホの画面に明かりがついた。
その待ち受けに表示されていた画像は――
<彩葉ツキ>
「この写真…昔の…!」
彗が待ち受けにしていたのは、彗とツキ、そして曜の3人が写る写真だった。
小学生くらいの時に撮った写真だろう。3人ともまだあどけない。
真ん中にはバットを肩に掲げた彗。
左側にはXBボールを持つツキ。
右側にはカメラを見つめる曜。
曜はすまし顔だが、彗とツキは笑っていた。
この3人でXBをプレイできるのが楽しくて仕方ない、といった表情だ。
<黒中曜>
「………………」
曜の中にはその写真を撮った時の記憶はないが、見ていると胸が締め付けられた。
きっと心が覚えているからだろう。かつての、幸せを――
<彩葉ツキ>
「彗…あんな風になっちゃってたけど、やっぱり私達の事…」
ツキの言う通りだろう。彗が曜とツキを大切に思っていた事は間違いない。でなければ、こんな写真を待ち受けにするはずがない。
でも、だからこそ不思議だった。どうして、死に際の彗は――
<黒中曜>
「彗は死ぬ前に…俺のせいでこんな事になったって言った。
あれは…どういう意味なんだ? ツキはわからないか?」
<彩葉ツキ>
「わからないよ…私は何も…」
ツキは目を伏せ、消え入りそうな声で答えた。
<黒中曜>
「そうか…ごめん…」
<彩葉ツキ>
「………………」
彗は死んで、この世から消え去った。
屍すら残らない死の後に残されたのは、深い後悔と、たったひとつの希望だけだ。
ナンバーズを倒し、ウルトラごほうびを使う権利を手に入れれば、彗を蘇らせる事ができるかもしれない。
その希望は偽りかもしれない。ゼロの悪趣味な嘘かもしれない。
それでも、曜は前に進むしかなかった。
彗の命を取り戻すために。
彗のスマホの待ち受けに残る、3人の幸せな時間をとり戻すために――
【トライブナイン 第2章 END】
執筆:小山恭平