2話「非情な改札」
地下鉄の駅構内は、まるでスラムのように荒れ果てていた。
足元にはゴミが散乱しており、壁にはスプレーで落書きが描かれている。
すさんだ場所にはすさんだ人間が吹き溜まる。
駅のあちらこちらには、見るからにガラの悪そうな連中がたむろしていた。
<図体のでかいチンピラ>
「見ねぇ顔だなぁ、お前ら…よそもんか?」
<細長いチンピラ>
「ここは俺らのシマなんだよ。通りたかったら通行料置いてきな!」
地下道を行く曜達は、何度もガラの悪いヤカラ達に因縁をふっかけられた。
しかし一ノ瀬との戦いを経て強くなった曜達にとって、そこいらのヤカラなんて相手にすらならない。
<彩葉ツキ>
「あ~、もう! 私達急いでるから! 相手してる暇ないんだって!」
言いながら、ヤカラ達をなぎ倒していく。
<轟英二>
「下賤の者の分際で僕に触るな!」
次々襲い掛かってくる火の粉を振り払っているうちに――曜達はあっという間にシナガワ改札前にたどり着いた。
<黒中曜>
「ここを通ればミナトに通じる地下通路に…よし、行ってみよう」
<千住百一太郎>
「じゃあ、さっさと行こうぜ! 一番乗りは俺がもらったぁー!」
<彩葉ツキ>
「あ、ズルい! 私が一番乗りしたかったのに!」
意気揚々と駆け出す千住百一太郎、その後を追うツキ。
わんぱくな2人に釣られ、曜達も走り出す――と、その時だった。
「バンッ!」
突然、行く手を阻むように改札のバーが閉じた。
<システム音声>
「コノ改札ヲ通過デキルノハ、4名マデデス。メンバーヲ選定シテクダサイ」
<Q>
「人数制限だと…?」
<千羽つる子>
「ついこの間までは、そんな制限なかったはずですが…」
怪訝そうな表情を浮かべるQとつる子。
何やら雲行きが怪しくなってきた。
<千住百一太郎>
「なんだあ!? 邪魔する気かよ! 邪魔くせえな…ぶっ壊しちまうか!」
百一太郎はそう言って、足を大きく後ろに振り上げた。
改札のバーを蹴り飛ばして破壊するつもりのようだ。
<システム音声>
「暴力行為ハ禁止サレテイマス。自衛システム…起動」
<千住百一太郎>
「ぎゃ~~~っ!?」
と、百一太郎が大きな悲鳴を上げた。
眩い光に包まれた百一太郎は、髪の毛を針金のように逆立たせ、全身を激しく震わせていた。
どうやら電気ショックを食らっているようだ。
<大井南>
「百一太郎さん!?」
<轟英二>
「下手に触れると感電するぞ。放っておけ」
百一太郎を助けようとした大井を、轟が止めた。
電気ショックをたっぷり30秒ほど食らった百一太郎は仰向けに倒れ、全身をピクピクと痙攣させていた。
<黒中曜>
「大丈夫か百一太郎!?」
<千住百一太郎>
「お、おおお…お兄ちゃんがいっぱいだ…へへ、お兄ちゃんだけでサッカーができそうだぜ…」
命に別状はなさそうだが、ダメージは深刻そうだ。
<彩葉ツキ>
「な、なにこれ…! 改札ってこんなに危ない場所だったの!?」
<轟英二>
「…そんなはずあるか。これは明らかに罠だ」
この改札が轟の言う通り罠だとしたら、それを仕掛けたのは――
<ゼロ>
「コラー!! 何を勝手に大人数で押しかけようとしてるの!」
と、またしてもゼロが姿を現した。
ゼロは口にくわえたホイッスルを「ピピー!」と鳴らし、イエローカードを高々と掲げていた。
<黒中曜>
「やっぱりお前か…! どういうつもりだ!?」
<ゼロ>
「数のゴリ押しで進められたら、なんの為に曜くんにXGさせてるかわかんないでしょ!? 何事にも適切な人数ってのがあるの! ミナトに行けるのは4人まで!」
<彩葉ツキ>
「4人って…なんでゼロが決めるの!?」
<ゼロ>
「この件に関してはノークレームでお願いするよ! じゃね~」
それだけ言い残し、ゼロはさっさと姿を消してしまった。
<五反田豊>
「地下通路は、ゼロに把握されていないという話だったのでは…?」
<Q>
「そのはずだったが…ゼロの方が一枚上手だったみたいだな」
<彩葉ツキ>
「あーもう! 邪魔ばっかりしてくるんだから! 彗を探すのにひとりでも人手がほしいのに…!」
悔しそうに地団太を踏むツキ。曜も同じ気持ちだった。
ゼロは事あるごとに曜達の前に現れては、目的の遂行を妨害してくる。
まるで、試練を与えるのを楽しんでいるかのように――実際楽しんでいるのだろう。あいつにとって、この世界はゲームでしかないのだから。
<黒中曜>
「ゼロに従うのは嫌だけど、メンバーを選ぶしかないな…」
話し合いの末、ミナトに向かうのは、曜とツキ、五反田とつる子に決まった。
残りのメンバーはやむなくシナガワプリンセスホテルのラウンジに引き返す事となった。