4話「衝撃の事実」
話に一区切りがついたところで、室内は静けさに包まれた。
誰かが伸びをし、誰かがスマホを確認する。
そんな緩んだ空気の中、曜はふと、カズキが何か悩んでいる様子であることに気づいた。
<青山カズキ>
「――っ」
何かを話そうとしているのか、口を開きかけては閉じ、また開きかけては閉じる。
カズキがこんなふうに言葉を選ぶ姿は、珍しかった。
曜が声をかけようとした、その瞬間――
<Q>
「カズキ」
Qが曜よりも先にその名を呼んだ。
静かな声だったが、それだけで室内の空気が変わる。
カズキが顔を上げ、ふたりの目が合う。何かを伝え合ったように、カズキは小さくうなずいた。
Qはふっと息を吐き、そして決意を込めた言葉を口にする。
<Q>
「みんな、聞いてほしい。
私は、ネオチヨダシティで一度死んだ。そして、ゼロによって蘇らされた」
誰もすぐには声が出なかった。
聞こえてくるのは皆が静かに呼吸をする音、ただそれだけだった。
<黒中曜>
「Qさん…タチの悪い冗談はやめてくれ…
ネオチヨダシティでカズキさん達とずっと一緒にいたじゃないか…」
沈黙の中、最初に口を開いたのは曜だった。
あまりにも信じがたい話に、冗談だと思い込みたかった。
<秋葉才蔵>
「僕はカズキさんから先に聞いたんだけど、曲田とのXBが始まる前に子供に毒を盛られたみたいで…
それで、UーDXロボと戦ってる間に毒が回って死んじゃったんだって…
ほんと、家臣として失格だ…Q様が毒を盛られていたことに気付かなかったなんて…」
<秋葉市之助&秋葉ひなぎく>
「――っ」
Qの死の経緯を語る才蔵は、最初は平静を装っていた。
だが、途中から感情を抑えきれなくなったのか、ぼろぼろと涙をこぼし始める。
あのニヒルな弟が泣いている――それだけで十分だった。
市之助とひなぎくは、この話が嘘ではないと悟り、顔を真っ青にした。
<秋葉市之助>
「も、申し訳ありません…」
<秋葉ひなぎく>
「我らがおそばにいたというのに…」
膝を床につけ、主君に謝罪するふたり。
抑えきれない涙が頬を伝い、静かに地面へと落ちていく。
<Q>
「お前達が責任を感じなくていい。私が勝手にしたことだ。
ただ…その影響かどうかはわからないが、どうやら記憶の一部が欠如しているみたいだ」
短く、事実だけが並んでいた。
だからこそ、その重さがまっすぐに落ちてきた。
――ジオウだけではなく、Qさえも命を落としていた。
一同は、その事実に激しい衝撃を受け、言葉を失った。
それから数分、ようやくカズキの気持ちが落ち着いたのだろう。
彼は、ゆっくりと唇を動かし、言葉を発した。
<青山カズキ>
「本当は、このことを話すべきかどうか、ずっと迷っていた…
だけど、ネオチヨダで、本来、君達に話すべきことを僕が隠し続けたせいで事態がこじれた。
これは、ミナトトライブでお世話になっていた頃からの僕の悪癖だ。
同じ過ちを繰り返したくないし、みんなに不信感を抱かせたくもない」
<黒中曜>
「カズキさん…」
まっすぐ仲間を見つめながら話すカズキの姿は、まるで"君達は僕の大事な仲間だ"と語っているかのようだった。
それを見て、曜も他のメンバーも、胸の内が読みにくいカズキが心から自分達を信頼しているのだと気づき、胸が熱くなった。
<青山カズキ>
「申し訳ないんだけど…ふたつ、お願いがあるんだ…
彼のことは、引き続きQと呼んでやってほしい。
そして何の記憶を失っているのか――それについては、わかっても口にしないでほしい。
時を見て、僕が話す。それまで待っていてくれないかな…?」
――引き続きQと呼んでほしい。
――時を見て、僕が話す。
カズキとQの間には、絶対的な信頼関係がある。
欠如した記憶が単純なものであれば、すぐにカズキが補うこともできただろう。
だが、彼はそれをためらっている。
なぜなら、Qが失ったのは――かつて大罪人であった"鳳王次郎"として生きていた頃の記憶だからだ。
その記憶は、彼にとってあまりにも重く、そしてつらいもの。
大事な家族として、それを思い出させていいのか――カズキは迷っているのだろう。
そして――
<十条ミウ>
「私からも、同じお願いをさせてほしいけど、いいかしら…?」
次は、ミウが静かに口を開く。
声は穏やかだったが、その目は強かった。
<十条ミウ>
「ジオウのことも同じよ。彼が何を失っているのか、気づいている人もいると思う。
でも、それを本人の前で口にするのはやめて…時間が必要なの…」
<滝野川ジオウ>
「俺は、何も失ってはいないが…」
ミウの言葉を否定するジオウだったが、その様子は明らかに"いつも"と異なった。
これまでのジオウを知る者であれば、誰の目から見ても、今の彼は別人のように見えるだろう。
<黒中曜>
「わかった。みんなも、いいな」
答えは言葉ではなくうなずきで返ってきた。
百一太郎が珍しく黙ってうなずいていた。
アジトの中に、静かな時間が流れる。
誰かが小さく咳払いをして、場が少しだけ動き出す。
それでも、しばらくの間、誰も余計なことを言わなかった。
言葉より重いものを皆で抱えていた。
<黒中曜>
「………………」
ふと、曜は隣にいるツキの横顔を見つめた。
きっと彼女も、蘇生の際に何かを失っている。
それでも、自分にはカズキやミウのように気づいてやることができない。
その無力さが、ただ悲しかった。――もしここに彗がいれば、どれだけ心強いのだろうか。
そう、強く思わずにはいられなかった。