18話「XB~VS園田~1」
"ウウー!"
曜がXBボールのスイッチを押すと、ゲーム開始を告げるサイレンが鳴り響く。
<タイガ>
「あれ? この街、XBフィールドに変化しねぇな?」
<大門愛海>
「本当だね…なんでだろう?」
通常であれば、XBボールの起動と同時に街は発光し、XBフィールドが展開される。
だが、オオタシティに変化はなかった。
耳障りなサイレンだけが鳴り響き、街は沈黙したままだ。
その異様な光景に、タイガ達は首を傾げる。
<雪谷えのき>
「オオタでXBしたところ見たことないし、壊れちゃってるんじゃない?」
<西郷ロク>
「ああ…オレも見たことがない…」
<十条ミウ>
「気にしても仕方ないわ。早く試合を始めましょう」
<黒中曜>
「ああ、そうだな」
1回表――
攻撃、園田チーム。守備、トラッシュトライブ。
<園田不兆>
「オマエら。気張れよー。ちゃんとやんねーと大変だからなー」
園田の口調こそ軽いが、大変という言葉の意味は決して軽くはないのだろう。
一番打者の表情は険しくなる。
<三田三太郎>
「訓練しただかなんだか知らねーが、打てるもんなら打ってみやがれ!」
ピッチャーの三田が第一球を投じる。
アウトコース低めのストレート。有栖川の指示通りのコースにボールが投げられる。
<園田の手下A>
「………」
打者はそれを微動だにせず、あっさりと見送った。
<三田三太郎>
「へっ! ビビッて手も出ないってか?
じゃあ次、行くぜ!」
<有栖川さおり>
「バカ! 調子に乗るな!」
第二球。
真ん中から外に逃げる変化球。決して甘い球ではない。
三田も言動こそ浮かれていたが、投じた球は有栖川の要求通りのものだった。
だが――
<園田の手下A>
「ふんっ!」
あっさりとボールは打ち返された。三田の頭を越した打球はぐんぐん伸びていく。
<三田三太郎>
「う、嘘だろ!?」
<有栖川さおり>
「タイガ! ツキ! そっちに行ったわ!」
すかさず有栖川は仲間へとボールの位置を共有する。
連絡を受けたふたりはすでにボールの落下地点へ走り出していた。
<タイガ>
「オーライ! 見えたぜ!」
<彩葉ツキ>
「タイガさん! 来るよ!!」
タイガはバラックを足場に飛び上がり、打球を捕まえると、すでに一塁を回った走者が来るのを待ち構える。
すぐに走者の姿が見えてきた。
<タイガ>
「行かせるかよ!」
<園田の手下A>
「…!」
突如、走者は急加速する。
<タイガ>
「なにっ!?」
想像を超えたスピードで寄ってくる走者にタイガは構えるのが遅れてしまう。
その隙を突かれる形で、走者はタイガの頭上を飛び越える。
さらにそのままタイガの方へ足を向けると、再度急加速しタイガへと強烈な蹴りを食らわせた。
予想外の事態があまりに連続したため、タイガはろくな防御態勢も取れないまま、吹き飛ばされる。
<タイガ>
「ぐあっ!!」
<彩葉ツキ>
「タイガさん!!」
バラックの薄いベニヤを壊して、ようやく止まったタイガはすぐに事態を察してツキへとボールを渡す。
受け取ったツキもタイガへの心配は一度忘れ、サードを守る仲間にボールを投げ渡した。
だが、その時にはすでに走者はサードへ到達し、止まっていた。
<黒中曜>
「タイガさん。大丈夫か?」
近くを守っていた曜もタイガを心配して駆けつけた。
だがその心配は杞憂に終わったようだ。タイガはすぐに起き上がった。
<タイガ>
「大したことねー。けど、あいつスゲー速さだったな」
<黒中曜>
「ああ…まさか、あんなスピードを出せるやつがいるなんて…」
先ほどの打者の異様な脚力に曜達が驚いていると、轟から通信が飛んでくる。
<轟英二>
「あれは、トゥーキョー社の最新モデルのスパイクだろうな。
今までのモデルに比べて威力が格段に上がってる。気を抜かないほうがいいぞ」
<黒中曜>
「あれが、トゥーキョー社のXBか…」
これが園田が心酔する"トゥーキョー社"製XBギアの威力。
曜が使っているビームバットも同じトゥーキョー社製だ。
だが、その性能を敵側の力として目の当たりにしたことで、曜は初めてその恐ろしさを実感していた。
次の打者が打席に入る。
先ほどよりも大柄な打者は、ストライクゾーンも広い。
だが三田は先ほどの反省から、決して甘いコースには投げなかった。
<三田三太郎>
「オラァ!」
ストライクかボールか。際どいコースへ投げ込まれた直球に、打者の反応がわずかに遅れた。
その影響だろう。スイングが僅かにずれ、打球は三田の頭上へ高々と舞い上がる。
先ほどとは違い、勢いのないフライだった。
三田が軽々ボールを掴んだ直後――視界の端を、猛スピードで本塁に迫る走者の姿がよぎった。
<三田三太郎>
「ち…! あれは、やべぇな!」
有栖川へ送球すればアウトは取れる。
しかし、先ほどのタイガの様子を見る限り、有栖川では衝突に耐えきれない。
三田は送球を選ばなかった。自ら走者の前へ立ちはだかる。
<有栖川さおり>
「え、ちょっと!?」
有栖川の困惑を余所に走者は本塁へ突入する。
三田はボールを持った手を真っすぐ突き出し、自らも走者へと突っ込んでいく。
<三田三太郎>
「どわぁ!?」
<園田の手下A>
「…っ!」
両者が激突する。
ボールを持った三田の手が走者をとらえたのを有栖川は見逃さなかった
ボールタッチが成立している。
サード走者はすでにアウト。ならば次にとるべき行動は2番打者の進塁を止めることだ。
<三田三太郎>
「有栖川! セカンドだ!」
吹き飛ばされた三田からボールを受け取る有栖川。
短い言葉だったが、三田の意図を理解するには十分だった。
有栖川はセカンド方向に向けてボールを投げる。
2番打者をアウトにすることはできなかったが、ファーストにくぎ付けにすることには成功した。
<園田不兆>
「ナイバッチー。まずはウチが1点だな」
たしかに走者はホームインしていた。だが、三田はそれに異議を申し立てる。
<三田三太郎>
「待てよ、そいつがホームインする前にボールタッチしたぜ!
だからそいつはアウト。点はなしだろ!」
三田の主張は正論だった。
とはいえ、今はジャッジロボという審判役もいない。
そんな状況で、園田が理屈を素直に受け入れるとは到底思えなかった。
だが、園田の口から飛び出したのは、誰も予想していなかった言葉だった。
<園田不兆>
「あっそ。いいぜ、じゃ得点なしでワンアウトな」
<有栖川さおり>
「えっ!?」
<園田不兆>
「…なんだよ、なんか不満か?」
<有栖川さおり>
「い、いえ…。やけに素直に認めるのね」
前回の試合では散々ルールを無視していた園田が、アウトかセーフかの判定では、あっさりこちらの主張を受け入れた。
あまりにも予想外の展開に、有栖川は驚かずにはいられなかった。
<園田不兆>
「じゃ、そうと決まれば続きをしようぜ~」