7話「24トライブ御一行様」
<滝野川ジオウ>
「また視線を感じるな…来るぞ」
建物を出てから十分も経たない内に、再び追い剥ぎの集団に囲まれる。
先ほどよりも人数は少ないが、全員がそれなりの武器を持っている。
<十条ミウ>
「少し目立ち過ぎたかしらね」
<雪谷えのき>
「まあ、みんな小ぎれいだもんねー。たぶん砂漠に入る前から目つけられてたんじゃないかな」
<轟英二>
「ふん、たしかに下賤なこのシティでは、僕のブランドで固められた格好はさぞ輝いて見えるだろうな」
<追い剥ぎD>
「………」
先ほどの追い剥ぎと違い、男達は無言で襲い掛かってくる。
戦闘が始まると、真っ先に狙われたのは轟だった。
<轟英二>
「くっ! なぜ僕ばかり狙うんだ!?」
<彩葉ツキ>
「…さっき、自分でも言ってたけど、全身、ブランドで固めてるからでしょ」
<轟英二>
「なるほど…下賤な追い剥ぎといえど、物を見る目はあるわけか…おわっ!?」
会話の最中であろうと、追い剥ぎ達は執拗に轟を狙い続けた。
そのため、自然とトラッシュトライブは轟を中心に護衛陣形を敷く形となっていく。
当然、普段より戦闘の難度は高い。
しかし、数々の修羅場を潜り抜けてきたトラッシュトライブにとって、その程度は障害にもならなかった。
彼らは轟を守りながら、襲い来る追い剥ぎ達を次々と退けていく。
<轟英二>
「よしいいぞ、その調子で僕の身ぐるみを守れ!」
<小日向小石>
「轟さんも守られるばっかじゃなくて戦ってよ!」
数名を倒したところで、追い剥ぎの集団は勝ち目がないと悟り、さっさと退散してしまった。
<千住百一太郎>
「さっきより厄介だったな……」
<Q>
「武器も建物で襲ってきたやつらより揃えた上で、引き際も見極めていた。
動きも素人ではなかったぞ」
<黒中曜>
「集団で統制も取れていた。相当襲い慣れているみたいだ。
轟さんを狙ってたし、金目のモノに対する嗅覚もあったな…」
<雪谷えのき>
「砂漠はオオタでも特にヤバイからねー。街のやつらと一緒に考えてたらダメだよ」
<西郷ロク>
「遮るものが無いゆえに絶好の狩場。
物資の略奪が一番多いのも砂漠地帯だ」
<タイガ>
「もっと気合いれねぇとってことだな…」
<雪谷えのき>
「さっすが、ダーリン!
いつでも、あたしと一緒にオオタで暮らせるね!」
<タイガ>
「はあ!? なんでこんなところに!
オレは、全部終わったらミナトに帰るからな!」
そんな会話をよそに、曜はひとり考え込んでいた。
<黒中曜>
「………………」
<彩葉ツキ>
「曜? 大丈夫?」
<黒中曜>
「あ、ああ、大丈夫。少し考え事をしていただけだ」
<彩葉ツキ>
「考え事?」
<黒中曜>
「さっき、俺達を襲ってきた人達のことだ。
たぶん、あの人達は、他のシティならこんな追い剥ぎになんてなってなかったはずだ。
けど、略奪や追い剥ぎをしないと、オオタでは生きられない…。
ここと統治ルールが行われているシティ。一体どっちがマシなんだろうって…」
<千羽つる子>
「うーん…たしかに、難しい話ですね…」
<千住百一太郎>
「でもよ。園田の仕事が上手くいけば、オオタ全体がよくなって、ああいうやつらも減るだろ?」
<黒中曜>
「そうだといいんだけどな…」
仕事に行き、稼いで、腹を満たす。
ただそれだけの"普通の生活"を送ってほしい。
そう願わずにはいられなかった。
<滝野川ジオウ>
「…待った。
聞こえたか? 何か来る」
耳を澄ましてみると、かすかながら遠くからモーター音が聞こえた。
砂丘の向こうだからか、まだ姿は見えないが、たしかにこちらへと近づいてる。
<青山カズキ>
「この音、一台じゃないね」
敵襲の可能性も鑑みて、全員が警戒態勢をとる。
すぐに砂丘の反対側から数台のバスが姿を現した。
<三田三太郎>
「なんだアレ…」
市街地を走っているようなバスが、砂漠を走っている。
その異常な光景に誰もが一瞬思考を止めてしまった。
<黒中曜>
「おい、こっちに近づいてないか…!?」
もし、あのバスの中にいる人間が全員追い剥ぎであれば、相当数いることになるだろう。
しかも、こちらは長時間の砂漠の移動で体力を消耗している。
たとえ先ほどまでのレベルの襲撃者であっても、苦戦は必至となる。
<Q>
「来るか…!」
やがて、先頭を走っていたバスが曜達のすぐ横で停車した。
クラクションにも似た、どこか間の抜けた音が鳴り響き、続いて乗車扉が開く。
そこから姿を現したのは、曜達にとって見覚えのある者達だった。
<24トライブ>
「おい」
<黒中曜>
「24トライブ…!」
<滝野川ジオウ>
「面倒だな…それもこの数…」
すぐに戦闘が始まる。
そう考えたトラッシュトライブのメンバーはすぐに戦闘態勢をとる。
だが、24トライブ構成員から出た言葉は、曜達の想像から大きく外れたものだった。
<24トライブ>
「大丈夫か? こんなところで歩き回って…もしかして遭難か?」
<黒中曜>
「え?…あ、いや…」
<24トライブ>
「その身なりからして、他のシティから逃げてきたやつだろう?
遭難しているなら、砂漠の外まで乗せてってやるぞ。
少し狭いが人数を分けて、後ろにも何人か乗せれば、大丈夫だろう」
構成員の口ぶりは、本気でこちらの身を案じているように聞こえた。
曜達は互いに顔を見合わせると、ゆっくりと戦闘態勢を解いた。
<青山カズキ>
「…いや、大丈夫だよ。
僕達は一応目的があってこの砂漠を渡っているんだ。心配無用さ」
<24トライブ>
「そうか。問題ないならそれでいい。
だが気をつけろよ、ここらは追い剥ぎや盗賊も多いからな」
<青山カズキ>
「お気遣い感謝するよ」
<24トライブ>
「気を付けてな」
24トライブの運転手がそう告げると、先ほども聞いた音が鳴り、乗車扉が閉まる。
そのままバスの車列は走り去り、すぐにその姿は見えなくなった。
<黒中曜>
「襲って…こなかった?」
<十条ミウ>
「それどころか、こちらを心配していた様子だったわ…」
<雪谷えのき>
「もしかして、24トライブじゃなかったとかー?」
<黒中曜>
「いや、あいつらを見間違うわけがない…。
いったい、なんで…」
これまで何度も戦ってきた24トライブの構成員が、なぜ襲撃してこないのか。
それどころか、こちらの身を案じ、手を貸そうとすらしている。
あまりの豹変ぶりに、曜達は困惑することしかできなかった。