6話「砂漠の生き方」
園田の依頼を引き受けたトラッシュトライブのメンバーは、園田の言う製品を保管している倉庫へ向かう。
だが、その道のりは決して楽なものではなかった。
<彩葉ツキ>
「あつーい…溶けちゃうよぉ…」
<轟英二>
「み、水ぅ…水をくれえ…。金ならいくらでもだしてやる…から…」
曜達が歩く道は、見渡すかぎり砂が覆いつくしていた。
人工的な建物もぽつぽつと建っており、人の往来もそれなりにある。
だが遮るものがないため、日光は容赦なく曜達を突き刺している。
地面からの照り返しと、時々吹く熱風が体力を容赦なく奪っていく。
<十条ミウ>
「休憩をとったほうが良いわ」
<青山カズキ>
「そうだね…あそこで休もう」
ミウとカズキの提案に従い、近くにある建物の中へと避難する。
建物はすでに廃墟なのか無人で荒廃していたが、日光が遮られているだけで外よりは幾分涼しかった。
<轟英二>
「はあ…生き返るな…」
各々が休憩や水分を補給する。
特に多く汗をかいていた轟はペットボトルを一呼吸も置くことなく一気に飲み干してしまった。
<小日向小石>
「みんな大丈夫? めまいや吐き気はしていない?」
<彩葉ツキ>
「ぎりぎりだいじょーぶ…」
<タイガ>
「つーか、そもそも、なんでここだけこんな砂漠丸出しなんだよ。
他のシティも荒廃してるとこはあったけど、こんなんじゃなかっただろ」
<千羽つる子>
「この辺りはXB法以前の争乱で、大きく被害を受けた場所なんです…
もともとは普通の市街地だったんですけど、争乱の影響で砂漠化してしまいました」
<黒中曜>
「いったい、何が起きたらこんな局地的に砂漠になるんだ…?」
<千羽つる子>
「未知の兵器が使われたとか、隕石が落ちたとか、いろいろ言われてますけど、どれも都市伝説の域を出ませんね…」
しばらく座り込み、体力の回復に努めていると、建物の上階から何か物音が聞こえてきた。
<青山カズキ>
「誰かいるね…」
その言葉を裏付けるかのように、物陰から何かが飛来してくる。
それは曜の頬のすぐ横を通り過ぎ、後ろの壁に突き刺さった。
<黒中曜>
「な、なんだ!?」
壁に突き刺さった何かをジオウが抜く。それは先端の尖った細い鉄の棒だった。
<滝野川ジオウ>
「ボウガンの矢。物騒だな」
<追い剥ぎA>
「なんだあ、外れたかあ」
物陰から現れたのは複数の男だった。
すぐに上階も騒がしくなったかと思うと、階段を駆け下りてさらに数名の男が現れる。
その全員が手元にボウガンや鉈、ナイフや角材を持っている。
彼らが追い剥ぎであることは、間違いなかった。
<追い剥ぎB>
「金目のモノを置いてけや」
<追い剥ぎC>
「着てるもんも全部脱げ」
<千住百一太郎>
「はあ!? 囲まれてんじゃねーか!」
追い剥ぎ達は、得物をもってジリジリとこちらににじり寄ってくる。
場には否応なく緊張が走り、誰も迂闊には動けない。
そんな中、最初に口を開いたのは意外にも西郷だった。
<西郷ロク>
「ふん、大した相手ではないな」
<追い剥ぎA>
「は?」
<雪谷えのき>
「わかるー。あたしなら絶対、こんな集団襲わないもん」
<追い剥ぎB>
「いいから金よこせや」
<西郷ロク>
「そんな得物でオレ達を狩ろうなど、笑わせる。
そんなやり方では、オオタでは生き残れない」
その言葉を踏まえたうえで、曜は改めて追い剥ぎ達を観察した。
たしかに、それぞれが手にしている得物は、どれも酷く傷んでいる。
先ほど放たれた矢が最後の一本だったのか、ボウガンには既に矢が装填されておらず、鉈やナイフも錆だらけで、とても実戦に耐えられる代物には見えなかった。
唯一、まだ武器として機能しそうなのは角材くらいだが、それとて曜達を相手取るには心許ない。
何より、彼らの姿はひどく痩せ細り、身なりも薄汚れていた。
もし追い剥ぎが上手くいっているのなら、ここまで困窮した様子にはならないはずだ。
つまり追い剥ぎを生業にこそしているが、あまり成功率は高くないのだろう。
<追い剥ぎA>
「なんでもいいから金置いてけ。
金以外も全部置いてけ」
<追い剥ぎB>
「置いてかないとコロス」
<タイガ>
「ちっ、気は進まねえがやるしかねえか!」
降りかかる火の粉である以上、払わねばならない。
それは理解していた。
だが、それでも曜は、この戦いそのものに強い後ろめたさを覚えていた。
それほどまでに、トラッシュトライブと追い剥ぎ達との間には圧倒的な実力差があったのだ。
抵抗らしい抵抗もできぬまま、彼らは次々と取り押さえられていく。
<追い剥ぎA>
「か、かね…」
<雪谷えのき>
「オオタで生きてくんなら相手は選ばないとねー」
<青山カズキ>
「さて、行こうか。倉庫まではまだかかるからね、あまり悠長にはしていられない」
建物を出て、再び倉庫を目指して歩きはじめる。
だが、先ほどよりもその道中は過酷だった。