22話「名もなき島へ」
<黒中曜>
「今のは、なんだったんだ…?」
<千羽つる子>
「高出力に耐えきれなかった…ということでしょうか」
<十条ミウ>
「それにしても、よくわかったわね。カズキ」
<青山カズキ>
「昔、似たようなことがあってね…」
<園田不兆>
「うー…」
園田はうめき声をあげ、ほとんど動かない。
それでも、園田不兆という人間を嫌というほど知ったトラッシュトライブのメンバー達は、迂闊に近付こうとはしなかった。
人を騙すことに長けた男だ。傷ついたふりくらい平然とやる――誰もがそう考えていた。
そんな中、えのきと旭川だけが園田へズカズカと歩み寄っていく。
そして、あろうことか倒れた園田を物色し始めた。
<雪谷えのき>
「あっれー。これじゃないー。
ここにしまったと思ったのになあ」
<旭川カイ>
「あったあった!!! これだ、これ!!!」
<雪谷えのき>
「おー、それそれー! じゃあ、ぱっきーんと!」
<旭川カイ>
「ぱっきーん!!!」
旭川は、チューペットでも割るような気軽さで、取り出した装置を真っ二つに折る。
よく見れば、それは爆弾の起爆用リモコンだった。
<彩葉ツキ>
「ナイス! ふたりとも!」
<黒中曜>
「これで、爆弾に怯える必要はないな」
ようやく一件落着――
そう思われた矢先、倒れていたはずの清死郎が、ふらつきながら園田へ近付いていく。
<有栖川さおり>
「清死郎…!? あんた、何してるのよ…!
大人しく小石に治療してもらいなさい!」
有栖川は慌てて清死郎へ声をかけた。
しかし、清死郎にその声は届いていない。
園田だけを見据え、ふらつきながら一直線に進んでいく。
<羽田清死郎>
「ついにこの時が来たな園田…」
清死郎は園田の髪を鷲掴みにすると、首を持ち上げる。
<園田不兆>
「よぉ…思ったよりタフじゃん…」
<羽田清死郎>
「誰かさんに半殺しにされまくったおかげで、そうなったのかもな…」
<園田不兆>
「で、オレを…殺すの…?」
<羽田清死郎>
「そうしたいのは山々なんだけどな、まずは約束通り吐いてもらうぜ。
お前と、ゼロ、それからトゥーキョー社の関係をよ。
全部吐いたら今この場で殺すのはやめてやる」
それは、トラッシュトライブが知りたがっていた情報だった。
だが、清死郎にとってはそこまで価値のあるものではない。
むしろ、長年の怨敵である園田の命を奪うことのほうが、個人としては遥かに重要だったはずだ。
その宿願を果たせる瞬間が訪れたというのに、清死郎は復讐ではなく、仲間達が求める情報を優先した。
<園田不兆>
「おいおい…昔のオマエなら――」
<羽田清死郎>
「うるせえ、いいから答えろ。今ここで殺されたいのか?」
<園田不兆>
「なら…教えてやるよ…
トゥーキョー社は…”無名島”で…うっ…」
そこまで告げたところで限界が来たのだろう。
園田の体から力が抜け、今度こそ意識は完全に途絶えたように見えた。
<羽田清死郎>
「ちっ、肝心なところで…」
<滝野川ジオウ>
「次、目覚めたときに無理やり吐かせるのがよさそうだな…」
<青山カズキ>
「うん、そうだね。
西郷くん。監禁に向いてそうな場所に案内してもらっていいかな?」
<西郷ロク>
「ああ、わかった…」
そうして西郷が園田を担ごうとした――その時だった。
<園田不兆>
「…ハハ!」
突如、園田が起き上がり、ポケットから円筒状の何かを取り出した。
園田がそれを地面に投げた瞬間、閃光と共に爆音が響き渡った。
<十条ミウ>
「フラッシュバン…!」
閃光から目が慣れた時には、園田は当初自分が乗ってきていたトラックに乗り込んでいた。
<羽田清死郎>
「園田ァ! テメー!!」
<園田不兆>
「オレも殺されるなら、相手は選びてぇからな。
オマエらとの"えっくすびー"そこそこ楽しかったわ。じゃーなー」
園田はそのままトラックを加速させ、あっという間にその姿は見え無くなった。
<羽田清死郎>
「クソ! 油断した!!」
<三田三太郎>
「あいつ。どんだけポケットに物詰め込んでんだよ…四次元ポケットか?」
<黒中曜>
「結局、肝心なところは聞けず仕舞いか…」
<Q>
「だがキーワードはあった。無名島…おそらく地名だろう」
<千羽つる子>
「聞いたこと、ありませんね…」
結局、この場にいる誰も無名島についての情報を知らず、他の場所にいる仲間達にもNINEで確認をしてみる。
だが誰からも有力な情報を得ることは出来ず、手詰まりかと思われた。
しかし、思わぬ人物から情報が届く。
<NINE(NEON)>
「ごきげんよう、曜様のご友人の皆様。
どうやらお困りのようですね。
よろしければ、無名島までのルートも含め、こちらでご案内いたしましょうか?」
<黒中曜>
「またNEONか…
どこから、俺達を見てるんだ…?」
<彩葉ツキ>
「いろいろ助けてもらってるけど、ストーカーみたいで怖いよね…」
<青山カズキ>
「とはいえ、今のままじゃ埒が明かないのも事実だ。
一応聞いてみようじゃないか」
カズキの言葉に従い、NEONに情報を求める。
するとすでに用意していたのか、すぐに地図データと、現在地からのナビ情報が送信された。
<NINE(NEON)>
「皆様がご無事にたどり着くことを祈っております」
そのメッセージを最後にNEONからのメッセージは途絶えた。
こちらからいくつか質問をしても、返答する様子はない。
仕方なく、地図データとナビ情報を確認する。すると――
<黒中曜>
「…これって、海の下を通ってる?」
<千羽つる子>
「いえ、よく見てください…。ここから海底トンネルがつながってますね…」
改めて地図を確認する。陸から海へと延びるルート案内。
その海と陸の切れ目の少し前に、たしかに"オオタシーライン(海底トンネル)"の文字があった。
<彩葉ツキ>
「そ、それって大丈夫なのかな…。冠水とか…」
<青山カズキ>
「トンネルが使われてるって話も聞かないね。有毒ガスが溜まっていたり、崩落している可能性もある」
<タイガ>
「いいから行ってみよーぜ! 動かなきゃ何にも始まらねえ!」
<青山カズキ>
「そうだね、ただその前に――」
<小日向小石>
「まずは、治療と休息が優先! しっかり休んでもらうよ!」
結局その日は疲れていたこともあり、バラック集落で一晩過ごすことになった。
<黒中曜>
「無名島、か」
地図で示された無名島の方角を見つめ、曜は小さく呟いた。
無名島――
そこへ辿り着けば、大きく何かが動き出す。
曜には、そんな確信にも似た予感があった。
同時に、胸騒ぎもしていた。
島へ行ってしまえば、何か取り返しのつかない事が起きるのではないか。
知らなくてもよかった真実を知ってしまうのではないか。
――そして、その予感は的中する。
しかし、この時まだ、その事実を知る者は誰ひとりとしていなかった。
【トライブナイン 第6章 END】
執筆者:クロノゲート