9話「再会と起爆」
事務室を出たふたりは他の探索をしていたメンバーと合流した。
とはいえ、成果はほとんどない。園田が作っているモノはまったく見当たらず、時々あるのはゴミやガラクタばかりだ。
<青山カズキ>
「やっぱり、何もないか…強盗を恐れてすでにモノを移動させたのか?」
<彩葉ツキ>
「私達のほうも何も…あったのはこんなモノくらいかなー」
そういいながらツキは先ほど見つけた数本のコードを取り出した。
<三田三太郎>
「あ、似たようなモン。こっちにもあったな」
<十条ミウ>
「たしかに、私も見たわ。気にするほどのものじゃないと思ったけど…」
<滝野川ジオウ>
「コードか…もともと、ここにあった何かに使うものだった、ということか…?」
<雪谷えのき>
「あっれー。このコードどっかで見た気がするんだけど、なんだったかな?」
そう、えのきがコードを見ながら首を傾げた、その時だった。
轟音と共に壁が破壊され、何者かが倉庫へと乱入してきた。
<双剣使いの男>
「くたばりやがれ!!」
煙と埃にまみれて、その詳細な容姿までは確認できないが明確にこちらに対する敵意を持った何者かであることはわかる。
<Q>
「敵襲か…!」
襲撃者は3、4人。こちらの人数を考えれば対処できない数ではない。
まして先ほどまでの野盗と同じ類の者ならば、そう苦戦することもないだろう。
そう考え、トラッシュトライブも応戦する。
だが襲撃者は思った以上に手練れだった。
人数は有利なのにも関わらず、苦戦を強いられる。
<黒中曜>
「クソッ! 邪魔するな!!」
曜は最も近くにいた髪の毛を逆立たせた男に対応する。
気配のあった方に蹴りを放つ曜だったが、男はすんでのところで回避する。
<ツンツン頭の男>
「おっとぉ! あぶねーあぶねー!」
攻撃を続けようと試みるが、男の動きは素早く、こちらの攻撃はいなされてしまう。
さらに男はそれに合わせるようにカウンター攻撃をしてくる。
<黒中曜>
「ぐっ!」
曜もすかさず反撃を試みる。
しかし、男はいつの間にか曜から距離を取っていた。
パワー自体はそれほどでもないが、技量が高い。どうしたら決定打を与えられるか。
そう考えている瞬間――
<金髪の女>
「大人しく…しなさいっ!」
<三田三太郎>
「ぐえっ!?」
混乱の中で、隣にいた三田が背後から攻撃をもろに受けて倒れた。
<黒中曜>
「…三田さん!?」
<ツンツン頭の男>
「ヒャハハ! がらあき!! がらあき!!」
気を取られた一瞬の隙を突かれて、曜は背後に移動した気配に気が付くのが遅れた。
<黒中曜>
「――っ!!」
すんでのところで、なんとか攻撃を回避するが、再びその姿を見失ってしまった。
<黒中曜>
「クソっ、思ったより強い…!」
このままでは、ジリ貧だ。
曜は焦りながら打開策を探る。
だが、その間にも倉庫内に立ち込めていた煙は徐々に薄れ、視界が開けていった。
――チャンスだ。
視界さえ戻れば、トラッシュトライブの仲間達とも連携しやすくなる。
そうなれば、煙の中にいる相手も倒せるはずだ。
曜は拳に力を込め、反撃のタイミングを見計らった。
しかし――
<タイガ>
「ん? お、お前――!!」
<雪谷えのき>
「あーーーーーーー!! 清死郎じゃん!!」
急にタイガとえのきの驚く声が、倉庫に響きわたる。
<双剣使いの男>
「お、おまえ、えのきじゃねーか。それに、そっちはえのきの婚約者の!?」
<タイガ>
「婚約者じゃねぇ!!! マジでその言い方、やめろ!」
<ツンツン頭の男>
「おー! じゃあ、あっちのは西郷か! お久しぶりぶりぃー!」
<西郷ロク>
「お前は…旭川…?」
<赤い服の巨漢>
「あ、ちょっとさおりん、アレ!! よく見て!!」
<金髪の女>
「え、ウソ!? もしかして今私がぶっ飛ばしちゃったのって三田!?
てことはまさか…」
あちこちで驚きの声があがり、同時に戦闘音がやんだ。
だが状況を把握できていないメンバーは困惑するばかりで、戦闘を止めるべきかも判断できない。
そんな時、どこからかカズキの声が響き渡った。
<青山カズキ>
「やれやれ…まさか強盗ってのが、君達だったとはね。
さすがに予想外だったよ。戦闘終了だ! 彼らは敵じゃないよ、多分ね」
<金髪の女>
「こっちもやめ! 武器を下ろして!」
その声で、ようやく曜達は戦闘態勢を解いていいことを理解した。
やがて完全に煙と埃が収まると、3人の男とひとりの女がハッキリと見えた。
<青山カズキ>
「驚いたよ。
まさか、有栖川さんと大門くんに、こんなところで再会するなんて」
カズキに"有栖川"と呼ばれたリーダー格と思しき女は、裾の広がったジャケットを羽織っており、黒髪の混ざった金髪をハーフアップにしている。
黒いニットワンピースからは健康的な足が見えており、赤いハイカットのスニーカーが鮮やかなアクセントになっていた。
大柄な男、"大門"はシャツの上から黒いベースボールシャツを羽織り、平つばのキャップを被っている。
よく見れば人のよさそうな顔をしているが、体格だけで威圧感を感じさせる。
<有栖川さおり>
「それは、こっちのセリフよ。
久しぶりね。カズキ、タイガ、えのき、あと――」
<三田三太郎>
「きゅぅ…」
<有栖川さおり>
「えっと…三田も元気そうね…」
<大門愛海>
「うん…僕には、全然元気そうに見えないけど…」
<有栖川さおり>
「だ、大丈夫よ!
三田は、変に頑丈だから、すぐに元気に起き上がってくるわ…! 多分…」
<羽田清死郎>
「つーか、なんで西郷とえのきがコイツらと一緒にいやがんだ?」
えのきから清死郎と呼ばれていた男は砂漠には似つかわしくない薄汚れたコートを羽織っていた。
首元にはストールを巻いており、体のあちこちが包帯で覆われている。
<旭川カイ>
「ヒャハハ! オレが知るワケねー!!」
曜と戦っていた旭川は、大きなフードのジャケットを着ている。
そして、首元には清死郎と同じようにストールを巻いていた。
そこで曜はふと、有栖川と大門という名前に聞き覚えがあることに気が付く。
<黒中曜>
「有栖川と大門って、もしかしてミナトトライブの…」
<有栖川さおり>
「そうよ。私がリーダーの有栖川よ」
<大門愛海>
「僕は、サブリーダーの大門愛海だよ。
愛海って呼んでいいからね~」
<西郷ロク>
「こっちは、清死郎に旭川。元オオタトライブの仲間だ」
<羽田清死郎>
「さっきは、急に悪かったな…」
<旭川カイ>
「まっ、あれは、おあいっこしょ~! おあいこ、おあいこ、おあいこ!!!」
なんと、襲撃者の正体はミナトトライブ。そして旧オオタトライブのメンバーだった。
曜は、彼らが敵ではないとはっきりすると、ほっと胸をなで下ろした。
<黒中曜>
「なあ。俺達は訳あって、ここに来たんだけど…有栖川さん達は、どういった理由で――」
本来ならば、こんなところで仲間同士が再会するわけがない。
そう思った曜は、すぐさま有栖川達に問いかけるが――
<雪谷えのき>
「あー。清死郎ー。旭川ー。
このコードって、どっかで見たことない? 昔、見た気がするんだけど、思い出せなくてー」
えのきは、先ほどツキが持ってきたコードが気になってたまらない様子で、曜の質問を遮り、それを見せつけるように清死郎と旭川へ問いかけた。
<彩葉ツキ>
「あれ…!? 私が持ってたはずなのに、いつの間に…!?」
<十条ミウ>
「さっき、すごい勢いで抜き取ってたわよ…」
<轟英二>
「さすが、卑しいオオタ出身だな…手癖が悪い…」
<旭川カイ>
「なんだ~? このコード」
<羽田清死郎>
「俺も見た記憶があるんだが、どこだったか…」
清死郎は、えのきの持つコードを食い入るように見つめる。
やがて何かを思い出したのか、その顔はみるみる青ざめていく。
<羽田清死郎>
「ちっ…! なんで、コレがここにあるんだよ!
お前ら、すぐにここから出るぞ!」
<雪谷えのき>
「えー、どうしたの。急に。
外、暑いから、もうちょっとここにいたいー」
<羽田清死郎>
「うるせえ! 死にたくなきゃとにかく倉庫から出やがれ!!」
尋常ではない清死郎の気迫に、ただごとではないと判断した一同はすぐに倉庫から離れる。
<有栖川さおり>
「あ、三田!」
<大門愛海>
「僕が抱える!!」
大門が気を失ったままの三田を抱えて最後に倉庫から飛び出したのとほぼ同時に、倉庫が大爆発を起こした。
「ドオオオオオン――!!」
<大門愛海>
「うわああああああ~!!!」
多くのメンバーはすでに倉庫から距離を取り、砂丘の陰に隠れていたために無事だったが、三田を抱えていた大門は脱出が少し遅れてしまった。
爆風に吹き飛ばされ、大門は三田を抱えたまま数メートル転がっていく。
<黒中曜>
「大門さん!! 三田さん!!」
<三田三太郎>
「ぶはっ!? なんだなんだ!?」
気絶していた三田だったが、先ほどの衝撃で意識を取り戻した。
<大門愛海>
「あー、みっちゃん。やっと起きたね。元気にしてた?」
<三田三太郎>
「ま、愛海!?
よかった…! お前も無事だったんだな!」
<大門愛海>
「うん。心配かけちゃって、ごめんね。
あと、僕だけじゃないよ。ほら」
<有栖川さおり>
「やっぱ、あんたって頑丈ね。
さっき、私がボコったのがあんたでよかったわ」
<三田三太郎>
「~~~っ!!! あ、有栖川も…!
オメーら、ちょっとは連絡してこいよ…!
俺と四つ子とねこまるが、どんだけ心配したと思ってたんだよ…」
そう言って、三田は大粒の涙をぽろりと零した。
事情があって、ミナトシティから去っていったミナトトライブのメンバー達。
いつしか連絡も取れなくなり、安否すらわからなくなっていた。三田は"仲間達は生きている"と強く信じていたものの、心細さも感じていたのであろう。
<有栖川さおり>
「ごめんなさい…これには、深い事情があって…」
<西郷ロク>
「待った…再会を喜ぶ前に、すぐにここから去ったほうがいい」
<滝野川ジオウ>
「ああ…。
爆弾が他にも設置されている可能性がある…」
<有栖川さおり>
「そうね…少し離れたところに良い場所があるわ」
有栖川はそこで一度言葉を切ると、Qに対して目を向ける。
<有栖川さおり>
「いろいろ事情も聞きたいしね…」
<大門愛海>
「………………」
訝しむような視線をQへ向ける有栖川とは対照的に、大門は困惑した表情を浮かべていた。